■建物の調査診断
「劣化診断」とも呼ばれますが、日常点検や定期点検とは別に、主に大規模修繕の前段階として行われるものであり、下表のような内容の建物調査を行い、その調査結果を現状チェック表、劣化調査図、劣化数量表および各部位所見・総括所見などにまとめるものです。
調査の項目には次のようなものがあり、必要に応じて組み合わせていきます。
1躯体関係
調査名 |
内容 |
参考費用 |
1.外壁・屋上・鉄部等目視調査 (打診・触診用) |
コンクリートおよびモルタルのひび割れ・浮き・欠落など、鉄筋の露出・錆・欠損など防水押さえコンクリートのひび割れ・浮きなど露出防水層のふくれ・破断・剥離など鉄部の汚損・剥離材質劣化状況など |
90円/u前後 |
2.バルコニー立ち入り調査 |
各住戸が専用使用しているバルコニーやルーフバルコニーに立入り、防水や揚げ裏の状態などをチェックする。 |
5,000円/戸 |
3.専有部分・専用使用部分に関するアンケート調査 (必要に応じ) |
各住戸に対し、天井・壁・アルミサッシ・手摺・給排水管などの状況について、アンケートにより調査を行う。 |
1,000円〜1,200円/戸 |
4.コンクリート中性化試験 |
コンクリートは本来アルカリ性で、これにより内部の鉄筋を保護している。酸性雨やコンクリート打設の際の材料の不具合などにより、コンクリートが中性化してくると、鉄筋が錆びやすくなる。鉄筋が錆びると膨張して、周囲のコンクリートのひび割れやカブリ部分の剥落をまねくため、中性化の度合いを調査して、必要があれば対策を講じる。 通常は躯体から直径100mm程度のコアを抜き、フェノールフタレイン溶液を噴霧して変色を調べる。5,000円/試料ぐらいであるが、別途コア採取費用がかかる。 |
5,000円/試料ぐらいであるが、別途コア採取費用がかかる。 |
5.コンクリート強度試験 |
構造物から直径100mm程度コンクリートコア試験体を採取して荷重をかけ、破壊に到るまでの最大荷重を試験体の断面積で割ったものを圧縮強度とする。 |
35,000円/試料 |
テストハンマーでコンクリート表面を20箇所程度打撃し、その反発硬度から圧縮強度を推定する方法。コア採取の方法と比べて非破壊・現場で簡易に圧縮強度が推定できる方法である。 |
6,000円/箇所 |
|
6.塗膜付着力試験 |
建物の外部塗装仕上げの劣化度合いを、躯体との付着力(接着力)で計測するもの。通常、鋼製のアタッチメントを塗膜の上に接着剤で貼付け、試験箇所を周辺の塗膜から切り離した上で、油圧式の接着力試験機により荷重を加えて破断時の最大荷重を測定する。 |
8,000円/ 箇所 |
7.シーリング硬化度試験 (デュロメータ法) |
窓廻りや打継ぎなどのシーリング材は、防水のために柔軟性を保持していなければならないが、任意に設定した調査箇所にデュロメータを使用して既存シーリング材の硬化の程度を把握し、新設時の数値と比較して劣化度を判定するもの。 |
5,000円/箇所 |
8.シーリング物性試験 |
調査対象箇所から既存シーリング材を長さ50cmで数箇所採取し、引張力や伸び率を測定する。 |
12,000円/試料 |
2設備関係
設備関係の更新や更正は通常、外壁等の大規模修繕工事と同時に行う必要はありませんが、もし工事を行う場合には、症状に応じて一定の調査が必要になります。
例えば、赤水等の症状がある場合は給水管の抜管が必要となり、また排水管の漏水や詰まりがある場合には、内視鏡検査や抜管による調査が必要となります。
この調査工事は、建物の特性によって調査のポイントが異なるために、個別の見積もりによることになります。
3概算費用計算例
実際に調査診断を行う場合には、個別に見積もることになりますが、ここでは(財)経済調査会発行の積算資料ポケット版『マンション修繕編』2006年前期の計算例をご紹介しましょう。
100戸のマンションの場合
項目 |
単位 |
単価 |
金額 |
予備調査 |
1式 |
81,400 |
81,400 |
資料調査、整備 |
1式 |
68,400 |
68,400 |
アンケート調査 |
100戸 |
1,350 |
135,000 |
一次診断(目視、簡易) |
100戸 |
2,790 |
279,000 |
一次診断(診断器具使用) |
100戸 |
3,340 |
334,000 |
二次診断(詳細調査) |
100戸 |
5,760 |
576,000 |
診断結果報告書・修繕計画書の作成 |
100戸 |
3,350 |
335,000 |
診断結果図面作成 |
100戸 |
2,260 |
226,000 |
計 |
2,034,800 |